2シーズンフルマラソン後、勢いで書きなぐった記事を読みやすく?ちょっと再編+気力が尽きて書ききれなかった部分を付け足しました。めっちゃ長いです。

口コミで高レートを叩き出したNetflixのスペインドラマ「ペーパーハウス」もう見ましたか?
めちゃくちゃ面白いよってよく聞くし、レビューを見ても高評価ばかり。
大筋は頭のいい強盗団が犯罪を企てて危険とか回避していくという内容。
で、オーシャンズ11っぽい感じの爽快映画なのかなーと期待してみたらなんだこれ…めっちゃ○ソやん…
ってなった後あることに気づいてから「何これ素晴らしすぎる…!」ってなり、とりあえずペーパーハウス信者に無事改宗したので布教活動しようと思います。

WARNING

「あらすじ(表サイド)」より下を見てしまうと、それだけで大まかな流れ・結末が大体わかってしまうほどのネタバレになっております。
これより下は、ネタバレ全然おK!むしろネタバレ見に来た!って人のみ進んでください。

あらすじ(表サイド)

私の名前はトーキョー。私は強盗の罪で警察に追われる身。だがある日、「教授」と呼ばれる男に自分のグループに入らないかと誘われ、彼に集められた犯罪のエキスパートたちに出会う。

私たちは素性を隠すため、全員ニックネームで呼ばれる。私の「トーキョー」という名前も、組織の中での私のニックネームだ。教授に集められた仲間たちは私を除いて全部で7人:ベルリン=切れ者のリーダー、ナイロビ=偽造に長けた快楽者、リオ=ITのエキスパート、モスクワ=小物、デンバー=モスクワの息子パパと同じく小物、ヘルシンキ=オスロと兄弟、オスロ=ヘルシンキと兄弟。

教授が長年温めていた「王立紙幣造幣所から紙幣を盗む」という計画のため、私はこの7人の仲間と共に5ヶ月間の訓練を受ける。一見完璧と思われる計画を私たちは成功させることができるのか…

ペーパーハウスの本当の意味

とりあえずはじめに答え置いておきますね。

ペーパーハウスは第二次世界大戦時の
悪の枢軸国側をメインに連合軍側との戦いを、
一見よくある現代ドラマ風に仕立て上げた作品!

1話目冒頭を見てまず思ったのが、現代版ロビンフッドかな?でした。
教授は王立造幣所を襲撃するにあたり絶対の禁止事項を仲間に言って聞かせます。
それが「誰の血も流さない」です。

僕たちはただの強盗じゃない。「国民を味方につけた義賊だ」。そのために、誰のものでもないお金を「誰の血も流さず」に奪う。殺しは絶対にやってはいけない。

これは教授が言った言葉(意訳)ですが、悪の枢軸国と言われる第二次世界大戦の悪役が掲げていたものもまずはこれ

  • ヒトラーは第一次世界大戦で敗戦国になり莫大な負債を抱え、不況にあえぐドイツで「自分はドイツ国民、特に貧しい労働階級の味方だ。自分は確実にドイツ経済を良くしてみせる」と演説をし、国民の支持を勝ち取った。
  • 日本が始めた大東亜戦争も元々は野蛮な欧米諸国の植民地を解放しよう、日本国民を共産党の魔の手から守ろうとしたものだと終戦時の首相、東条英機も遺書で書いています

    イタリアは主要枢軸国ですが、国全体の意向で戦争に参加したわけではなく、途中で内戦勃発の上に早々と戦線離脱するので割愛。

戦犯とされた国は「義賊」として自由と国民の生活向上のために立ち上がったもの。
と、言うのが表向きの綺麗な理由ですね。
しかし、義賊だなんだと言いながら結局彼らは皆「自分の為にお金が欲しい」と言う私欲のために動いているので、そこら辺も戦争というものを上手く象徴していますよね。

教授が象徴しているのはヒトラーではない(と思われます)が、彼の父が同じように銀行強盗をし、結果警察に射殺されていると言う背景や、五ヶ月も訓練を受けなきゃいけないのか?と文句を言う仲間たちに対し、「自分はもっと長い時間をかけてこの計画を準備してきた。5ヶ月なんて何でもない。」と言うところは、ヒトラー/第一次世界大戦で負けてしまったドイツまんまな気が…

ここまで来るとキャラ = 国を象徴している事はお察しでしょうが、なぜ上記エピソードをベルリンにしなかったのかが少し謎。教授が象徴しているであろう国・スペインは、第一次大戦時にも中立国を保っていたうえに連合軍側を支援していたはず…????
第一次大戦後の不況と内戦=パパの銀行強盗失敗 ⇨ お金欲しい ⇨ ドイツへ加担の部分のこと?
そう考えると少し乱暴だけれども、スペイン内戦を助けたドイツと、WWII時ドイツを支援したスペインは、作中でも示唆されていた様に「もともととっても仲良し」であり、お互い「お金」が欲しく、2人協力してWWIIを引き起こしたってことにしても良いのか、な…?笑

首都の名前=国の象徴

簡単にキャラとそのキャラが象徴するもの(私的見解)をリストアップします:

犯罪グループ

  • ベルリン=ドイツ/ヒトラー
  • トーキョー=日本
  • リオ=イタリア
  • オスロ=ノルウェー
  • ヘルシンキ=フィンランド
  • モスクワ=ソ連
  • デンバー=アメリカ
  • ナイロビ=イギリスの植民地/ヒトラーを支持したドイツ国民?
  • 教授=スペイン

警察側

  • ラケル=アメリカ
  • ラケルの元夫=ソ連
  • アンヘル=フランス
  • コロネル(情報局員)=イギリス

  • ラケルの娘=アラスカ州

人質

  • アルトゥール=連合国軍側のスパイ?
  • モニカ=ポーランド/ユダヤ人/ハワイ/LA?
  • アドリアーナ(ベルリンのお気に入り)= 恐怖政治で従うしかなかったドイツ国民/ドイツの支配下となった国
  • イギリス大使の娘=イギリス・イギリス領土

なぜ連合軍側の国名が枢軸国側に入っているのか?

親枢軸だった国や中立を保った国も入れているからだと私は思っています。
枢軸国は3カ国— ベルリン(ドイツ)、トーキョー(日本)、リオ(イタリア)—ですが、もちろん「世界大戦」ですからメインがその3カ国で、他にも枢軸国側として戦った・戦わざるを得なかった国が。また、中立だと宣言しながらも枢軸国に密かに支援した国(スペイン)、攻撃を見送りにしていた・日本の行動を黙認し、さらに地下資源に乏しい日本に資源を提供するのを許していた国(アメリカ)ってことなんじゃないでしょうか。ソ連は独ソ不可侵条約、日ソ中立条約があった時期のためかなと思います。

特にソ連に関して言えば、最終的には連合軍について戦勝国となりますが、独ソ不可侵条約なんて悪どいこしといて、やってることが完全に枢軸国と一緒ですよね…

ちなみに、ドラマの中でもベルリン、トーキョー、リオの3人だけ顔バレしてしまうのは、世界中でも歴史の授業で「主要枢軸国」として習うレベルで知られているのがドイツ、日本、イタリアの3カ国だからでしょう。

なぜリオだけ首都の名前じゃ無いのか

主要枢軸国の内、イタリアだけ途中で戦線離脱してしまうから。また、もともと戦うつもりが無く、ドイツの戦況が良いのを見てとった後、うまい汁を吸ってやろうと同盟国になったことも原因じゃ無いでしょうか。

Rio というのはスペイン語、ポルトガル語、イタリア語などでは「川」という意味らしく、WWI・WWIIと二つの大戦で主要枢軸国となる時期があるのにもかかわらず、どちらとも戦況と周囲に流されてコロコロ態度を変えたのがイタリアなので、深読みかもしれませんがイタリアを象徴するのになかなか言い得て妙なニックネームかもしれません。

とかごちゃごちゃ言いましたが、よく考えたらリオをローマとかイタリアの首都にしちゃったら完全に悪の枢軸国揃っちゃうし、一応ロビンフットっぽく犯罪者をヒーローに仕立ててる?ドラマで、第二次大戦時の悪役をヒーロー扱いしちゃまずいですよね。

メンバーの死 = 国の行方

残念なことに、シーズン1・2の作中に3人も強盗団メンバーが亡くなってしまいます。
リーダーであるベルリンと、他2人は少し違う形だけれども、彼らの死は歴史と一致する部分があります。

  • オスロ(ノルウェー)
    • 中立宣言をしていた中ドイツに奇襲され、イギリスの支援を受け奮闘するが約2ヶ月で陥落。ノルウェー政府と国王は亡命し、国内ではドイツの傀儡政権が立つ。しかし、亡命したノルウェー国王はレジスタンス活動を呼びかけ支援。最終的には連合国軍側とされる。
  • モスクワ
    • 独ソ不可侵条約でドイツと仲良くヨーロッパを分割・支配するも、いきなりドイツに縁切り宣言され独ソ戦争が始まる。もちろんその後は戦勝国に。

奇しくも亡くなってしまうメンバーは、最終的に連合軍側につき戦勝国とされてるんですね。作中では「死」という形で強盗団から抜け出すことで、枢軸国側からの足抜けを描いています。

それだったらフランスだってヴィシー政権の時もあったし、フランスはなんでメンバーに入ってないんだとか、デンバー(アメリカ)・ナイロビ(イギリス側)だって脱退してるべきでは?って感じですが…それは後ほど解説します。

リーダーであるベルリンは作中でも特別感がありますが、彼の死はオスロとモスクワとはまた違った事象を象徴していると思われます。

  • ベルリン(ドイツでもありヒトラー自身を象徴しているのを前提で。)
    • これは象徴というよりも実際起こった出来ことそのまんまの再現で、ヒトラーの自殺じゃないでしょうか。ヒトラーが最期彼の妻/お気に入りの女性と一緒にいたところも同じ。ただ一つ作中と違うのが、ヒトラーの妻は心から彼に心酔して愛しており、彼と一緒に自殺するところですね。
アメリカとナイロビが戦線離脱しない(死なない)理由

そもそもアメリカもイギリス植民地も最初から連合軍側だから。

アメリカはソ連のようにドイツと手を結んでいた時期もなく、しばらく我関せずで参戦せずに、ちょっとスペインや日本を目溢ししていたけれども、最初からイギリス優遇の措置はとっていた。

ナイロビ(イギリス植民地)に関しては、WWII中今がチャンスというように便乗してイギリスに反抗し、枢軸国を助けたりするケースもありながらも枢軸国側とは見なされずにすみ、最終的にはどこもイギリスから独立することができた。

上記のように両方とも形は違うけれども、連合軍側でありながらも枢軸国にとっては「大なり小なり益になることをしていた」という理由での選抜メンバー入りであり、ノルウェーやソ連などと違い表立って枢軸国側にいたわけではないので脱退宣言はいらないと解釈します。

フランスがメンバーに入っていない理由

フランスは最初から連合軍側だから。
まず初めにドイツに対して宣戦布告したのはイギリスとフランス。ドイツにコテンパンにされてしまい、しばらくドイツの傀儡政権が立つけれども、イギリスと協力して自国を取り戻しドイツを相手に戦った。

アンヘルが強盗団のリーダーである教授にボコボコにやられちゃうのも、フランスがドイツに蹂躙されちゃうのと同じですね。

このドラマの見どころ=国関係をラブストーリーに

世界大戦と名前がつくほどにたくさんの国と人が関わった事件なので、細かくすると色々な視点があるのですが、大元の視点は枢軸国側視点と連合軍側視点でしょう。それと太平洋戦争とヨーロッパでの戦争。
ペーパーハウスは国関係をラブストリーに見立てているのが面白い!
とりあえず今回はメイン視点であるスペインとアメリカのストーリーを私なりに解説します。

裏のあらすじ、というか時代背景(教授とラケル視点:メイン視点)

主人公はドラマ制作国のスペイン(教授)。ヒロインはアメリカ(ラケル)。
ヒロインである強国アメリカはモテモテの逆ハー状態。ドイツ(ベルリン)の脅威が迫る欧州諸国はドイツに協力するか、強国イギリス・アメリカの庇護・援助を乞うかしかなかった。
しかし脅威のドイツが近くにあり、ドイツ軍上陸は食い止めているが空襲で結構な痛手を受けているイギリスよりもここはやはりアメリカさんの力が鍵。

第二次大戦が始まる直前に内戦をしていたスペインの国力は弱まっており、内戦で援助してくれたドイツ・イタリアとは仲がいいけど正直スペインは戦いなんかできない。先の大戦で連合軍側につき、戦勝国になりはしたけど経済的に打撃を受け、その後も戦に続く戦により同じく国力が弱っていたイタリアしかり。(教授が、「自分は体が弱かった」「リオは幼稚すぎて計画に参加させれない」とドラマの回想シーンで話していたのはこのことかと。)アメリカを敵に回したくないと考えていたスペインは、表向きは中立国を宣言して一人安全地帯にいながら後方支援(スパイ活動の協力など)をすることに。

その後はドイツと仲違いしながらも密かに後方支援を続け、表向きはアメリカに求愛。スペインが生き残るかどうかはアメリカ次第。アメリカに支援行為を気づかれて、痛い目見てもアメリカが見逃してくれるなら生き残れる…!僕たちの本当の敵はソ連でしょ?って言ってアメリカを勧誘しようとしたり、それが無理なら「確かに裏切りってました、ごめんなさい、でも僕のアメリカちゃんに対する愛は本物なの…!」って証明するためにスペイン自国のスパイを一掃したりしてなんとかアメリカの愛を勝ち取る。
だいぶ犯人グループと仲良くしてて、ほぼほぼ一味だけどうまーく第二次世界大戦を切り抜けることに成功した。

なぜタイトルがペーパーハウスなのか

ペーパーハウス=紙幣造幣所
ってことではないでしょうか?
ちなみに原題は La casa de papel = The House of Paper
英語のタイトルは Money Heist (金泥棒)なので、邦題の方が原題に忠実ですね。

シーズン1の最終話のエンディングで造幣所の映像、大恐慌の映像かな(?)労働階級であろう人々が仕事がなく不況に困っている映像が出てきますね。

ドイツは第一次大戦後2回お金の価値がなくなる自体が起こりました。
1回目:1910年後半〜1923年に起きたハイパーインフレ
    (物価が6千億倍に跳ね上がった)
2回目:1929年に始まる大恐慌。世界的なデフレ
    (お金の価値が大暴落。紙くず同然に)
その2回ともヒトラーは国の主導権を握ろうと画策するのですが、初めの1回目、ハイパーインフレの中で起こしたミュンヘンのクーデターは失敗に終わってしまいます。
そして2回目にドイツを襲った経済的問題を私は解決すると国民に約束をして彼は政権を握ることに成功します。

ヒトラーは紙幣を大量に刷ってしまったために起こった経済的困難とそれに伴って起きた問題(ルール占領)をどうにかしようとクーデターを起こしたのに、ドラマの中では彼自身が紙幣を大量に印刷し続けているのが皮肉じゃないでしょうか。

*ちなみに:なぜドイツでハイパーインフレが起きたのか*
第一次大戦中に戦争に多額の資金をつぎ込んだドイツは敗戦後、賠償金を支払うお金が全くなく、じゃあどうしよう?→そうだ銀行でお金いっぱい作ればいいじゃん!ってなります。一般的にお金が大量に出回るとインフレが起きる=物価が上がってしまうと言われているのですが、ドイツの中央銀行が大量に紙幣を刷ったために超超超物価が上がってしまった。

誰にもムカつかずにこのドラマを楽しむ方法

主人公である「トーキョー」をメインとして観ていると、まず初めの数話だけで彼女とリオのトラブルメーカーさに大抵の人がイライラします。
なので、夏目漱石の「こころ」と同じようにトーキョーを介していかにスペインが危機回避をしていくかをメインに、第二次世界大戦がどう終わるかを念頭に置いて観ているとトーキョーにもイライラしないし、教授にもラケルにも「こんな大事な時期に何やってんねん!」ってなったりしないです。

製作者の日本に対するイメージってこんな頭おかしいやつなんか…ってなるのはちょっと悲しい()ですけど、でも当時の日本を彼女のようにバイタリティがあって魅力的な国だと思ってくれてるのかな(白目)と。ていうか当時の日本とやってることが同じすぎて面白すぎる。トーキョーを第二次大戦時の日本だと思えば「あー確かにこんな感じよね、うん。」ってなるのでイライラしない(笑)

そして、起るイベントには大抵実際に起きた事件を象徴しています(多分)。
なのでこれってこのことかな?って考えながら観ていくとめちゃくちゃ面白かったです!
ただ、もちろん史実再現ドラマとかではないので、一事が万事歴史に沿っているわけではないと思います。ラケルがアメリカだとしたら、ソ連に窮地に立たされたことは少なくともWWIIの間にはなかったはずですし…(ですよね?)
ですが、キャラがWWI関連でジョークを飛ばしたり、WWII中に反ファシストが歌っていた Bella Ciao が頻繁に出てきたりすることから、作り手が先の大戦を意識していたことは間違いないのではないでしょうか。
(一般的にファシストだと見られている側に歌わせるというのはなんとも皮肉ですが。)

キャラクターの象徴するモノで私が推測した以外の意見があれば、ぜひ聞きたいのでコメント欄で聞かせてください♪もちろん、それ以外の見解もお気軽にどうぞ!

“第二次世界大戦下のスペイン.” Wikipedia. Wikimedia Foundation. Accessed September 2, 2019. https://ja.wikipedia.org/wiki/第二次世界大戦下のスペイン#クレーブス(2000).

ゲルハルト・クレープス. “第二次世界大戦下の日本=スペイン関係と諜報活動” Accessed September 2, 2019. https://www.seijo-law.jp/pdf_slr/SLR-064-237.pdf

原田 泰. “歴史に学ぶインフレより怖いデフレの危険性.” WEDGE Infinity(ウェッジ). 株式会社ウェッジ, May 15, 2014. http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3727.

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 日本大百科全書(ニッポニカ). “ルール占領(ルールせんりょう)とは.” コトバンク. Accessed September 2, 2019. https://kotobank.jp/word/ルール占領-151159.

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